1.樹脂・プラスチックの種類
プラスチックには、熱を加えて成型を行うもので熱を加えると何度でも柔らかくなり冷やすと再び硬くなる「熱可塑性樹脂(プラスチック)」と成型時に熱を加えるが一度硬化するとその形を維持する「熱硬化性樹脂(プラスチック)」がある。
その中でダイキャスト等の金属精密鋳造法に代わり、可塑性があり、安くて軽量、金属材料に代替できる機能(強度、耐熱性、耐薬品性等)を持つ「エンジニアリングプラスチック」が多くの産業に利用されるようになった。
また、光硬化型樹脂、導電性樹脂(カーボン、銀等を含む)、複合材料としてガラス繊維を含むもの(FRP、PPS等)、無機物質、セラミックスを含むもの、樹脂・プラスチック繊維等がある。
2.樹脂・プラスチックへの表面処理
樹脂やプラスチックへのめっきは次のような目的で行なわれている。
ポリカーボネートへの無電解ニッケルめっき

(目的)
1. 導電性を付与する。電極、回路等を形成する。(プリント基板等)
2. 耐熱性、耐候性、耐摩耗性、硬度等物理的性質を改善する。
3. 金属外観等、装飾品目的に利用。
4. 帯電防止、電磁波シールド、半田付性等、機能特性の付与。
2.1
めっきが行われている樹脂の種類
めっきが行なわれている樹脂・プラスチックには次のようなものがある。
(1)ABS樹脂
最も一般的に車、携帯電話、日常雑貨品等に使用されている樹脂で、めっき用のグレードがある。
(2)エンジニアリングプラスチック
エンジニアリングプラスチック(エンプラ)は、それら樹脂の持つ特性(機械的強度、耐熱性,耐薬品性、加工性等)にさらにめっき金属特性を付与することにより複合的機能材料としてさまざまな所で利用されている。
a. エンジニアリングプラスチック
エンジニアリングプラスチックスには次のようなものがある。 ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド(ノリル)、ポリアセタール、ポリエステル等。
b. スーパーエンジニアリングプラスチック
エンジニアリングプラスチックの中で耐熱性、機械的強度等の物性に優れたものをスーパーエンジニアリング プラスチックと言い次のようなものがある。
ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエチルケトン(PEEK)等。
(3)
その他
エポキシ樹脂、フェノール樹脂等にガラス繊維、カーボン繊維等を強化材とした繊維強化プラスチックス(FRP、CFRP)、また、上記エンジニアリングプラスチックにはガラスファイバー(GF)等を添加しためっき用グレード等がある。
(4)
めっきの付きにくい素材
めっきの付きにくい樹脂・プラスチックの特性とめっきとの関係は、撥水性の表面を持つ素材(テフロン)や、湿式めっきでは、親水性を付加させるためのエッチング等の処理が素材自身が有機溶剤や化学薬品に耐性を持つため、めっきに適した表面状態を作りにくい場合、また素材の熱膨張係数とめっきする素材の熱膨張係数に大きな差がある場合めっき後の伸縮で膨れや剥離を生じやすい。
また、アクリル樹脂は高温処理液を含む工程中では細かいクラックを生じ割れやすくなる。 これらの素材へのめっき方法は素材にあった条件の選定の他、めっき可能な他の素材(ABS、導電性ペースト、エッチングフィラー混合樹脂等)をコーティングするか、物理的表面粗化、真空蒸着等のドライプレーティングを行う等の方法があるが素材の組成、形状、目的によっては目的の表面処理が得られない場合がある。
(めっき工程)
1. めっき工程は、一部の導電性プラスチック(カーボン、銀、銅含有プラスチック)を除き金属のように電気が流れないため一般の電気めっきのようにめっきする金属の溶けた溶液中で品物をマイナス極、めっきと同じ金属あるいは不溶性電極をプラス極として電気化学的にめっきする方法ができないため、プラスチックはドライプレイティング(真空中、あるいは希ガス中にてめっき金属を物理的に表面に蒸着させる方法)又は、無電解めっき法(パラジウム等の触媒となる金属を表面に化学的に付着させ、めっき金属を電気を使用せずに化学的に還元析出させる方法)によってめっきが行われている。
2. ABS樹脂へのおもな工程の例 (無電解めっき法)
ABS樹脂への代表的な工程は次のようになっている。 ABS成形品 - 冶具セット - 脱脂 - 水洗 -
エッチング (クロム酸エッチング液等) - 水洗 - 中和 - 水洗 - キャタリスト (パラジウム触媒付与)
- 水洗 - アクセレ−ター - (感受性化) - 水洗 - 無電解ニッケル又は無電解銅めっき
- 水洗 - 活性化 - 水洗 - ストライクめっき - 目的の各金属めっき
(写真: 無電解ニッケルめっき、左から、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニール(PVC)、テフロン(PTFE))


城南電化情報委員会
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