城南電化協同組合 (東糀谷めっきセンター)
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めっきとは


1.環境規制と表面処理

       

1.1 環境規制
 EU(欧州連合)では古くから環境保護への取り組みが行われていたが化学物質規制については、1967年「有害物質の評価分類と表示・包装に関する規制 (67/548/EEC)」以後EUを中心とする環境会議、環境規制 (ELV、WEEE、RoHS、REACH等)が実施され、製品設計から製造、利用、廃棄、回収、再利用にわたる製品の全ライフサイクルにおける環境負荷や人の健康に害を及ぼす危険を最小化することを目的で実施されてきた。
 日本の各産業界においてもその影響は大きく、全ての産業に関わる表面処理業界においては、規制対象物質の使用禁止、代替え物質への変更、リスク評価、データの提供等 大手企業に追従した形で対応をせざるおえない状況となった。
 現在では、日本産業の競争力向上を目指し、これら環境規制に関する情報の適切な管理、開示、伝達の仕組み作りの普及を目的にJAMP(Joint Article Management Promotion-consortium、アーティクルマネジメント推進協議会)、JGPSSI(Japan Green Procurement Survey Standardization Initiative、グリーン調達調査共通化協議会)等が推進活動を行っている。
 また、地球環境問題においては1992年ブラジルのリオデジャネイロで行われた「地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)」で採択された「アジェンダ21」、1997年京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3)」で採択された「京都議定書」があり地球環境問題への取り組みを義務づけられる結果となっている。
 下記に主な環境規制・用語の解説を簡単に挙げる。
各環境規制等の内容については、見直し改正が行われるため、環境省、厚生労働省、経済産業省、関係国・各関係機関の情報に注意する必要がある。

1.2 アジェンダ21
 1992年ブラジルのリオデジャネイロで行われた「地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)」で採択された文書。 (全体で40章、約500ページに及ぶ)
 アジェンダ21とは、「21世紀に向けての課題」の意味で、21世紀に向けて地球環境問題に対する持続可能な開発を実現するための具体的な行動計画として次の4つのセクションから構成されているが法的拘束力はない。

   1. 社会的・経済的側面
   2. 開発資源の保護と管理
   3. 主たるグループの役割強化
   4. 実施手段 


1.3 京都議定書
 1997年京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3)」で採択された文書。二酸化炭素(CO2)等6種類の温室効果ガスについての排出削減義務を定めた議定書で、2005年2月16日に発効した。
 1990年を基準年として温室効果ガスを先進国全体で5.2%削減することを義務付けるとしながら、排出削減努力を認めるとし、森林によるCO2の吸収、他国における排出削減量を「排出権」として移転し自国の削減量に算入できるとする「京都メカニズム」(国際排出権取引、クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI))を盛り込んだ。

 下記に京都議定書の概要を挙げる。

   項 目 内 容
1  対象温室効果ガス CO2、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄
2 各国の削減目標(%)、参加状況 日本 6、 米国 7、 欧州連合(EU) 8、 ロシア 0、 (米国 2001/3枠組みから離れる)
先進国全体で5%以上を削減、 (2007/12バリ島会議(COP13)で米国、中国、インドが交渉に参加)
3  目標年 2008〜2012年 (5年間の平均が目標を達成すること)
4  基準年 1990年
5  京都メカニズム 他国の排出削減量を「排出権」として自国に移転できる制度の導入。
@国際排出権取引、Aクリーン開発メカニズム(CDM)、B共同実施(JI)
6  森林によるCO2の吸収 90年以降の植林等、による削減分は、森林減少によるCO2増加分との合算の上削減分として算入できる。



1.4 ELV (End-of Life Vehicles)指令
 1990年の欧州理事会決議によって使用済み自動車についてECレベルで処理すべき廃棄物であることが確認され、その後欧州委員会で原案が取りまとめられ2000年10月21日に発効された。
(廃自動車指令(ELV指令 2000/53/EC))

 対象製品は、車両、ELV、構成部品、材料、補修・交換部品で、リサイクルを目的とし、
生産者の役割として下記が挙げられている
   @ リサイクルへの関与(解体業者への有害物質等の情報提供)
   A 費用負担(2002/7/1以降販売される自動車、2007/1/1以降のすべての廃車)
   B 製品設計(リサイクル性、環境負荷物質の使用条件付き制限)

 環境負荷物質(ELV使用制限物質)は下記が指令で定められた。
   @ 鉛(1000ppm以下)、  A 水銀(1000ppm以下)、  B カドミウム(100ppm以下)
   C 6価クロム(1000ppm以下)
  2003年7月以降の販売車は原則使用禁止となった。
 材料ではアルミ材中の鉛(4000ppm以下)、銅材中の鉛(4000ppm以下)となっている。


1.5 WEEE (Directive on Waste Electrical and Electronic Equipment)指令
 WEEEは、電気・電子機器廃棄物の削減・資源の有効活用を目的に2003年2月13日に発効された。
(廃電気電子機器指令(WEEE指令 2002/96/EC))

 使用済み家電、電気・電子機器の回収、リサイクル責任を製造業者が負うとし廃棄品の回収・処理は自己負担か共同融資システムを選択し対応できるとしている。
 消費者は、廃棄製品の無料返却が可で、製造者は、新製品を発売する際に保証金の支払い義務が課せられ、2005年8月以前に販売された製品のリサイクル費用は指令施工後8年間 (大型製品10年間)は新製品の販売価格に上乗せできるとしている。
 また製造日・製造者の識別表示義務、危険物質等の詳細の提示が可能であること、廃棄製品の年間回収目標を人工1人当たり4Kgとし加盟各国は2006年12月31日までに目標達成を義務付けられている。

再生・リサイクル率は下記の通り定められている。

対象製品 再生率(%) 再利用・リサイクル率(%)
 大型家電 80 75
 小型家電 70 50
 IT機器 75 65



1.6 RoHS
(Directive on the Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical equipment)指令

 RoHSは、電気電子機器に係わる特定有害物質の使用制限に関する指令で、2003年2月に公布され206年7月1日に発効されEU(欧州連合)域内において、コンピュータ、通信機器、家電等の電気・電子機器について有害な化学物質の使用を禁止する内容となっている。
 RoHS指令は、生産から廃棄処分にいたる製品のライフサイクルにおいて、環境負荷や人の健康に害を及ぼす危険を最小化することを目的とするもので次の6物質が禁止物質となつている。
 (RoHS指令 2002/95/EC)

            対象物質

対象物質 規制値 (閾値) ppm 備 考注1
 カドミウム(Cd) 100   めっき関連物質
 鉛(Pb) 1000   めっき関連物質
 水銀(Hg) 1000   めっき関連物質
 六価クロム(Cr6+) 1000   めっき関連物質
 ポリ臭化ビフェニル(PBB) 1000
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) 1000

RoHS指令では非意図的な含有を除き、規制物質の使用がないこととなっており、均質材料ごとの分析確認が必要となっている。
 @ 非意図的含有とは、自然界に存在する素材・原材料に含まれ、工業材料として精製過程において技術的に除去しきれない物質、反応工程で生じ技術的に除去できない物質等の含有をさす。
 A 均質材料とは、最小構成材料 (めっき被膜等も対象として含まれる)
 RoHS指令摘要除外項目には、水銀5mg/1本を超えない小型蛍光灯、玩具・レジャー、スポーツ器具、特別用途目的の直管蛍光灯の水銀、・特定されていないランプ等にに含まれる水銀、指令76/769/EECの改正指令91/338/EECに基づき禁止された用途を除くカドミウム表面処理(めっき等)、吸収型冷蔵庫中のカーボン・スチール冷却システム防錆用の六価クロム等がある。
注1: RoHS対象物質では、カドミウム、鉛、6価クロムが表面処理で使用されている、水銀は古くから仏像などの金めっきを行うのに「水銀アマルガム法」に使用されてきたが、現在のめっき製造工程では有害物質、環境問題のため使用されていない。 しかし、同じ金属材料であることからめつき被膜の分析管理対象としてしている。
PBB、PBDEは臭素系難燃材としてプラスチック材料等で使用されてるケースがあったが、めっき工程で使用されないこと、めっきが金属被膜であることから、初回分析確認で確認されなければ管理対象としている企業はないといえる。



1.7 PFOS/PFOA
 (パーフルオロオクタンスルホン酸およびその塩類/パーフルオロオクタン酸およびその塩類)規制
 PFOS/PFOAは、有機フッ素化合物で、その安定性、親水性の特性を利用し、フッ素系コーティング剤、脱脂、洗浄剤、消化剤、難燃剤、撥水剤等に使用されている。
 しかし、そのすぐれた特性が動物や人体に対し蓄積し発がん性や生体機能障害が懸念されている。
日本でも2002年に「化審法 (化学物質の審査および製造等の規制に関する法律)」に第二種監視化学物質に指定されており、ストックホルム条約にも追加される方向である。
 表面処理業界では、脱脂洗浄剤、6価クロム使用材料、ミスト防止剤、一部の無電解ニッケルめっき材料に使用されているものがあるがPFOS/PFOAは2010年4月よりめっき業界では使用禁止となる。 PFOS含有調剤については社団法人、日本表面処理機材工業会のホームページ(http://www.kizaikou.or.jp/pdf/20071228%20pfos%20ichiran.pdf)にある「機材工PFOS含有調剤一覧表」に掲載されている。 
(ストックホルム条約 : 残留性有機汚染物質(POPs: Persistent Organic Pollutants)から人の健康及び環境を保護することを目的とし2004年5月に発効、現在アルドリン、クロルデン、ディルドリン、エンドリン、へプタクロル、ヘキサクロロベンゼン、マイレックス、トキサフェン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、DDT、PCDD、PCDFの12物質が指定されている。)



1.8 REACH (Registration Evaluation Authorization and Restriction of Chemicals)規制
 2007年6月1日に新化学物質規制として化学物質の登録、評価、認可、制限に関する規則として施行され、人の健康と環境保護、EU産業競争力の維持・向上・自由流通の確保等を目的にしている。
 2008年6月1日から欧州化学品庁(ECHA)が担当機関として発足し予備登録期間 (2008/6/1〜12/1まで)を設けた段階的な運用が始まった。
その概要を下記に示す

 規制対象物質
 規制対象物質は既存・新規を含め約10万とも言われる化学物質の中から約3万物質が対象と見込まれている。
表面処理関連企業においても1企業当たり年間1t以上の高懸念物質(SVHC)は3年以内 (製造量により異なる)に欧州化学品庁(ECHA)に登録しなければ製造・輸出を行うことがでなくなった。
その後、REACH、高懸念物質(SVHC)は、 2013年1月現在138物質となっている。



高懸念物質 (SVHC)

  対象物質 物質名(英語) CAS No.
1 アントラセン Anthrecene 120-12-7
2 4.4'-メチレンジアニン 4.4'-Diaminodiphenylmethane 101-77-9
3 塩化コバルト(U) Cobalt dichloride 7646-79-9
4 五酸化二ヒ素 Diarsenic pentaoxide 1303-26-2
5 三酸化二ヒ素 Diarsenic trioxide 1327-53-3
6 重クロム酸ナトリウム二水和物 Sodium dichromate 7789-12-0、 10588-01-9
7 マスクキシレン 5-tert-butyl-2.4.6-trinitro-m-xylene
(musk xylene)
81-15-2
8 トリブチルスズオキシド Bis(tributyltin)oxide 56-35-9
9 ヒ酸水素鉛 (ヒ酸鉛) Leed hydrogen arsenate 7784-40-9
10 ヒ酸トリエチル Triethyl arsenate 15606-95-8
11 ヘキサブロモシクロドデカン (HBCDD)
+1.2.5.6.9.10-ヘキサブロモシクロドデカン
Hexabromooyclododecane (HBCDD)and all major
diastereoisomers identified (αーHBCDD,βーHBCDD,γ-HBCDD)
25637-99-4、3194-55-6、134237-50-6、134237-51-7、134237-52-8
12 DEHP (フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)
    (ジエチルヘキシルフタレート)
Bis(2-ethyl(hexyl)phthalate)(DEHP) 117-81-7
13 DBP (フタル酸ジブチル) Dibutyl phthalate 84-74-2
14 BBP (フタル酸ブチルベンジル) Benzyl butyl phthalate 85-68-7
15 クロロアルカン (C10-C13) Alkanes, C10-13, chloro (Short Chain Chlorinated Pareffins) 85535-84-8
        以下省略



1.9 化管法 (PRTR法・MSDS制度)
 化管法とは、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の促進に関する法律で、PRTR制度とは、化学物質を取り扱う事業者への化学物質の排出量、移動量等の届出を義務づける制度である。
 PRTR制度の目的は、化学物質取扱い事業者が、どれだけの化学物質を環境に排出しているかについて自ら把握し、届出により自主管理の促進、環境に対する予防保全を目的としている。
 MSDS制度とは、化管法指定化学物質及び指定化学物質を含有する製品を他の業者に譲渡・提供する場合は、指定化学物質の性状や取扱いに関する情報の提供(MSDS)が義務付けられる制度。
 平成20年公布の法改正により第一種指定化学物質(PRTR制度とMSDS制度の対象となる現行354物質から462物質)、第二種指定化学物質(MSDS制度のみ対象となる現行81物質から100物質)へ改正されMSDS制度は、平成21年10月1日から、PRTR制度は平成22年4月1日から開始された。


1.10 化審法
 化審法(化学物質審査規制法)とは、難分解性の性状を有し、かつ人の健康を損なう恐れがある化学物質による環境汚染を防止する目的で昭和48年に制定された。
 新規の化学物質の事前審査制度を導入し、製造、輸入に対する届出を義務づけ下記項目について審査がおこなわれる。
   1. 自然分解しにくいものであるかどうか(難分解性)
   2. 生物の体内に蓄積されやすいものであるかどうか(蓄積性)
   3. 継続的摂取により、人の健康を損なうおそれがあるかどうか(人体への長期毒性)

平成21年見直しにより、EUで導入されたREACH規制(新化学物質規制として化学物質の登録、評価、認可、制限に関する規則)、ストックホルム条約等の動向を考慮し改正されていく。


1.11 グリーン調達とは
 グリーン調達とは、国や地方公共団体、事業者が製品に使用する部品や資材を選定する際に、価格や品質、納期だけを重視するのではなく、環境配慮(リサイクル可能、長期間使用可能、再生原料の使用等)を調達基準に追加することである。
 それにより供給側をも取り込んだ形で、環境配慮の活動を進めていくという目的がある。 関連法には、グリーン購入法(国等による環境物質等の調達の維持等に関する法律)がある。



2. 環境対応の表面処理

EU環境規制等に対応した表面処理(特にめっき)の一例 (参考)を次に示す。
 有害物質を含有していても製品本来の性能・特性を発現させ維持するために必要であり、代替え物質等がなく、RoHS指令等規制値内であれば認可されるケース(無電解ニッケル等)もある。また特殊用途(軍事用等)には適用除外となるものもある。
 また、製造工程の過程では有害物質を使用しているが、これら実際の製品となる最終皮膜等には含有されてこないもの(不動態化処理等)もあることを理解しておく必要がある。そして、工程で使用される有害物質は排水処理等により環境対応が図られている。
 また環境対応と同時にコスト削減も検討を行わなければ、目的を達成するために高価な材料に変更したため逆にコストアップとなり以前よりも付加価値性を上げなければ収益低下につながりかねないので注意を要す。

  表面処理(めっき)種 対象有害物質 環境規制への対応例 (参考)
1  クロムめっき 6価クロム 3価クロム系への変更
2  化成処理(クロメート処理等) 6価クロム 3価クロム系への変更、クロムフリー化
3  無電解ニッケル/リン合金めっき等 規制値内に分析管理、ビスマス系添加剤に変更
電気ニッケルめっきに変更
4  すず/鉛合金めっき 特殊用途を除き使用禁止。
純すずめっき、すず/銀、すず/銅、すず/ビスマス系合金めっき等に変更
5  鉛めっき 特殊用途を除き使用禁止。
6  すずめっき 特殊用途を除き使用禁止。規制値内に分析管理、純すずめっき、銀めっき等に変更
7  カドミウムめっき カドミウム 特殊用途を除き使用禁止。亜鉛+3価クロメート、ニッケル、
亜鉛/ニッケル合金めっき等に変更
8  銅めっき 規制値内に分析管理
9  その他の表面処理(めっき等 カドミウム、鉛、水銀,6価クロム等 定期分析管理により非含有または規制値内であることを確認しておく。
規制対象有害物質の調査・確認を行い、代替え物質への変更またはこれらを使用しない。



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