1.素材の硬さとめっき
素材の硬さは、金属、樹脂、木、石等その物質の化学的・物理的構造により異なり、素材は、加工のしやすさ、目的と用途により使い分けられ利用されている。 めっきはしばしば、耐磨耗性・摺動性を目的に柔らかい素材に硬さを、あるいは硬い素材に柔らかい 表面が必要な場合等、その素材に付加機能をもたすため利用される。
2.素材の磨耗防止
素材の磨耗は、2つの素材の接触・すり合わせ等により磨り減る事等から生じるが高価な素材、 重要な部品等は、そのライフを持たすためしばしば硬質めっきや表面改質(硬化)等が行なわれる。しかし、硬さがあっても残留応力や磨耗過程の影響により状態や物性が変化し耐磨耗性が低下するこ
ともある。 素材の磨耗を防止する方法は、他にすべりをよくするためテフロンや2硫化モリブデン等を複合させたコンポジットめっき等が行なわれる場合もある。 また、2硫化モリブデン処理、潤滑油等との組み合わせも行なわれている。
3.耐磨耗性めっき
耐磨耗性めっきは、機械・工具部品、成形金型、印刷、電気・電子等に利用されており、硬さを目的とした硬質クロムめっき、ニッケルコバルト合金めっき、コバルトタングステン合金めっき等があるが、無電解ニッケル‐リンめっき後の熱処理によりクロムと同等の硬さを得る方法、、無電解ニッケル-ボロンや、窒化ホウ素、炭化けい素、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ダイヤモンド等の硬質のセラミックス等を添加しためっき浴からコンポジットめっきを行なう方法、イオンプレーティング(TiC、TiNコーティング)、PVC、CVD、表面改質、浸炭、窒化、陽極酸化、溶射、塗装等により行なわれている。
最も一般的に利用されている、耐摩耗性めっきには硬質クロムめっきがあるが、浴組成に環境規制の対象となっている有害物質の6価クロムが含まれているため、最近では3価クロムめっき液が利用されるようになった。
めっき方法は、無電解めっき、電気めっきによるタンクめっきの他、筆めっきによる部分補修等も古くから行われている。
4.めっきの硬さ
めっきの硬さは、その金属種、めっき方法、めっき液組成、光沢剤の有無、めっき条件により異なり、熱処理等を行なったものはその硬度も変化する。 硬さ試験は、ブリネル硬さ試験(JIS Z 2243)、ビッカ-ス硬さ試験法(JIS Z 2244、2252)、ロックウェル硬さ試験(JIS Z 2245)、ショアー硬さ試験(JIS Z 2246)等がある。 めっきが薄い場合は、下地めっきや素材の影響を拾いめっきだけの硬度を硬度計等による測定ができない場合があり、断面を測定したり、厚く(50μm以上)めっきしたもので測定したり、試験荷重を検討し評価しなければならない。一般的なめっき金属の硬度は次の表に例を示す。下記数値は、上記変動要因があるため実測値、薬品メーカーカタログ値、参考資料データよりめっき種別の光沢剤の含まないもの、含むものの大まかな変動範囲等を参考に挙げたものであり、実際の製品の硬度を補償するものではない。
めっき種
|
硬度(HV) |
モース硬さ(参考)
|
|
銅めっき(シアン浴)
銅めっき(硫酸浴)
|
100〜230
40〜180 |
1.滑石
2.石コウ
3.方解石
4.ほたる石(フローライト)
5.りん灰石
6.生長石
7.石英(水晶)
8.黄玉(トパーズ)
9.鋼玉(ルビー、サファイア)
10.ダイヤモンド
|
|
ニッケルめっき(ワット浴)
ニッケルめっき(スルファミン酸浴)
無電解ニッケル(Ni−P) |
150〜400
200〜500
500〜800 |
|
クロムめっき |
500〜1250 |
|
金 |
150〜200 |
|
銀 |
50〜130 |
|
ロジウム |
650〜700 |
|
パラジウム |
250〜650 |
|
亜鉛 |
2.5(モース硬度) |
|
カドミウム |
2.0(モース硬度) |
|
ニッケル-コバルト合金
ニッケル-タングステン合金
コバルト-タングステン合金 |
630〜650
720〜830
850〜940 |
城南電化情報委員会
|