城南電化協同組合 (東糀谷めっきセンター)
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1. 鉄鋼 ( 鉄鋼一般・高張力鋼・磁性鋼 )



1. 鉄鋼への表面処理

  鉄は、資源が豊富であり加工性、リサイクル性にすぐれ、道具として、また構造材料として人類の歴史の中で最も利用されてきた素材の一つである。
  鉄は長い経験と技術の進歩により「鋼」としてその応用範囲を広げ、さまざまな種類の鉄鋼が生み出された。 しかしながら鉄鋼は錆びやすいという特徴があるため一部のステンレス鋼等を除きその表面に防錆処理(耐食性向上)として古くから塗装・黒色酸化皮膜処理・亜鉛めっき等が行われてきた。 現在では耐食性以外に耐摩耗性、耐熱性、潤滑性、溶接性、塗装下地処理、美観等、高機能を付加させる目的で多くの表面処理が行われている。

 

2. 鉄鋼の種類と表面処理

 鉄鋼には、大きく分けて炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等があり、 表面処理(めっき)においては耐薬品性、水素脆性等その材料の組成成分、加工履歴に注意する必要がある。

 

 2-1. 純鉄、低炭素鋼、高炭素鋼

 純鉄は、不純物が非常に少なく鉄に炭素が0.02%以下のものを言う、また、炭素鋼は、一般に鉄に炭素が0.02〜約2%含有する合金であり、けい素、マンガン、りん、硫黄などを含むとされており、低炭素鋼は、炭素が0.3%以下、中炭素鋼は、0.3〜0.7%、高炭素鋼は、0.7%以上のものをさすとされている。
 純鉄及び低炭素鋼への表面処理は前処理薬品によるマンガンや硫黄などの溶解性物質も少なく、低炭素のため水素脆性等の問題も少ないことから一般的な処理法である、溶剤脱脂、アルカリ脱脂(電解脱脂)、酸処理(光沢酸処理、スケール・スマット除去等を含む)、中和、めっき(電気めっき又は無電解めっき)の単純な工程(水洗・詳細は省略)にてめっきが行なわれている。 
  高炭素鋼は、水素脆性等の影響を受け易いため、めっきにおける酸処理においては希酸の使用、処理時間を短くする等注意が必要である。
 また、焼きならし、焼入れ、焼き戻し等が行なわれる場合、表面にスケール、変色の強いものもありスケール等の除去には機械的処理(サンドブラスト、ホーニング等)、過マンガン酸カリウム浸漬等の化学的スケール除去剤を併用する場合がある。
 また、素材の水素脆性等の感受性化は炭素数だけでは決まらない場合があり、次の高張力鋼を含め熱処理等による硬化処理が行われた場合等は注意が必要であり、HRC32以上の硬度を持つ材料は表面処理工程、ベーキングの必要性を検討すべきである。

 

2-2. 高抗張力鋼 (低合金鋼、マルエージング鋼)

 炭素鋼に炭素以外の金属元素を少量添加して引張り強さ490N/mm2以上で靭性、加工性を向上させた鋼を言い、航空機材料において、低合金鋼ではクロムモリブデン鋼((米国鉄鋼規格)AISI−4130等)、ニッケル・クロム・モリブデン鋼(AISI−4340等)、また、マルエージング鋼(18Nigrade200〜300等)が利用されている。
 高張力鋼へのめっきは水素脆性の影響を受けるためめっきにおける酸処理においては希酸の使用、処理時間を短くする等注意が必要であり、また、めっき後4時間以内にベーキング処理(温度・時間は規格により異なる)を行なう必要がある。

 

 

  2-3. 磁性鋼

  磁性材料は、下記に示すように軟磁性材料(変圧器、発電機等に利用)と硬磁性  材料(小型モーター、OA機器、スピーカー、健康器具、文具等に利用)に大きく分けられる。

(1) 軟磁性材料(パーマロイ、けい素鋼)
軟磁性材料は、磁性体の内部磁束を利用し外部磁場に対し磁化されやすく、透磁率が高く、保磁力が低い。


(2) 硬磁性材料(アルニコ磁石、フェライト磁石、希土類磁石(サマリュウム・コバルト、)等)
硬磁性材料は、磁性体の外部へ作用する磁束を利用するもので、難磁性材料とは逆に保磁力が高く、外部磁場の影響を受けにくい。



 磁性材料へのめっきは、電気導電性のある鉄系合金鋼では素材組成成分の特性を理解し前処理薬品の選定が適切であれば鉄鋼素材へのめっき法が適用できるが、すでに磁性を持つ素材は空気中、又は溶液中の鉄粉等の磁化されやすい塵を引き付けぶつやざら、等の欠陥を生じやすいため作業環境に注意を要す。(クリーンルーム、ろ過機の適用等) 可能であれば磁化させる前の素材をめっきするか、消磁処理を行ってからめっきすることが望ましい。
 非導電性素材(フェライト磁石等)では、スパッタリングやイオンプレイティングの乾式めっきの他、セラミックスと同じように素材に適切なエッチング処理等を行い触媒活性化処理後無電解銅、ニッケルめっき等の湿式めっきを行なうことができる。

 

 (フェライト磁石 (湿式法による金めっき)) 

 



  2-4. 非磁性鋼  高マンガン鋼、ステンレス鋼、超合金鋼

 マンガン鋼は、マンガンを焼入性・強度の向上、脱酸素剤の目的で添加されるが高マンガン鋼は一般に11%以上を含むオーステナイト系非磁性の合金で電磁気材料、対摩耗性部品等に利用されている。マンガンは酸に対し水素ガスを発生し溶けやすいことからめっき及びめっきの前処理において素材の腐食、めっき皮膜の密着不具合、めっき後のしみ汚れの発生を引起しやすい。(めっき詳細はマンガン・モリマン(Mo−Mn)へのめっき参照) 

 ステンレス鋼は、クロム又はクロムとニッケルの合金鋼で一般にクロムを11%以上ふくむ鉄鋼をステンレス鋼という。 ステンレス鋼はその金属組織によりマルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、二相ステンレス(オーステナイト・フェライト系)、析出硬化型ステンレスに分類され、高耐食性、高強度、高耐熱性合金として構造材料の他、環境対応材料として利用価値が高まっている。 マルテンサイト系、SUS404(13クローム系)等のステンレス鋼は磁石につくがオーステナイト系、SUS304等のステンレス鋼は一般に非磁性で磁石につかない。 (めっき詳細は 3.ステンレス鋼 参照)

 
 超合金鋼は、鋼の耐食性又は耐熱性を改善するため、合金元素を多量に添加し、鉄分が約50%以下となっている合金をいう。合金元素には鉄、ニッケル、コバルト等を基材とするもの、耐熱性酸化物粒子(セラミックス)をチタン、ニッケル、アルミニウム等の耐熱合金粉と分散合金化したもの(ODS)等が開発されており、耐高温腐食特性等の向上目的に表面処理が検討されている。



 

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