城南電化協同組合 (東糀谷めっきセンター)
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めっきとは


1.ステンレス鋼

  ステンレス鋼は、クロム又はクロムとニッケルの合金鋼で一般にクロムを11%以上ふくむ鉄鋼をステンレス鋼という。  ステンレス鋼はその金属組織によりマルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、二相ステンレス(オーステナイト・フェライト系)、析出硬化型ステンレスに分類され、高耐食性、高強度、高耐熱性合金として宇宙・航空機、船舶、自動車、建築、プラント等の構造材料の他、環境対応材料として精密機器、電気機械部品、装飾品、家庭用品に広く利用されている。
しかしながら、一般の鉄鋼と比較しコストがかかることが欠点となっている。


代表的なステンレス鋼の種類と特徴・用途

 

種 類

特徴・用途

 

種 類

特徴・用途

マルテンサイト系

SUS403、SUS410 SUS416、SUS420 SUS429、SUS431 SUS440、

焼入れ硬化する
,高強度、耐食性、高硬度、対摩耗性、タービンブレード、シャフト、ベアリング、刃物

 

二相

|ステナイト系

フェライト系

SUS329L1、SUS329J3L、 SUS329J4L

高強度、耐海水性、耐応力腐食割れ性に優れる。

化学プラント等に利用

 

フェライト系

SUS405、SUS410L SUS429、SUS430 SUS434、SUS436L SUS444、SUS447J1

熱処理硬化しない、

高耐食性、耐高温酸化特性、溶接・加工特性に優れる、建築、厨房、自動車、化学プラント等に利用

 

|ステナイト系

SUS201、SUS202 SUS301、SUS302 SUS303、SUS304 SUS305、SUS309S SUS310S、SUS316 SUS317、SUS321 SUS347、SUS384

延性、靭性に富む、冷間加工性、溶接性、耐食性に優れる。

家庭用品、建築、自動車、原子力発電等広範囲に利用

 

析出硬化型

SUS630、SUS631

SUS631J1

17-4PH、17-7PH

PH15-7Mo

AM355

 

析出硬化性のチタン、アルミ、銅等を添加元素とし成形加工後に熱処理硬化させるため変形の問題が少ない、耐食性、溶接性に優れる

宇宙・航空機、シリンダー、スプリング等に利用



2.ステンレス鋼への表面処理

 ステンレス鋼は、銀白色で表面に生成する酸化皮膜によりさび難く耐食性があるため素材そのものでの利用価値が高い素材であるが導電性、接合性、耐摩耗性を目的に金、銀、ニッケル、無電解ニッケルめっき等が、反射特性を目的に金、銀、ニッケル、クロム、エッチング、黒色処理等が、ねじ等のかじり防止の目的で銀めっき等が、また更なる耐食性、耐指紋特性を目的に不動態化処理(パシぺーション)が、装飾を目的としたものでは、塗装接着性の向上を目的に陽極電解酸化、クロム酸・硫酸(りん酸)酸化等による浸漬着色、電解着色、めっき、スパッタリング、エッチング、熱処理等が行われている。
 ステンレス鋼へのめっきは、一般的には表面の強固な酸化皮膜の除去を塩酸等の強酸中で陰極電解を行うか塩化ニッケルを主成分とするニッケルストライク(ウッド)浴にてストライクめっきを行いニッケルめっき又は目的のめっき・処理等を行うことができる。

3.水素脆性と応力腐食割れ

 水素脆性とは、鋼中に吸収された水素によって鋼材に生じる延性又は靭性が低下する現象をいう。水素脆化は、腐食、溶接、酸洗、電気めっきなどの場合に生じることが多くこれらの原因によって生じた破壊を遅れ破壊ともいう。 水素脆性破壊は、引張り応力の掛かった場所、応力の集中する切欠き(ノッチ)部、結晶粒界で起こりやすい。
 ステンレス鋼における脆性破壊は、フェライト系とオーステナイト系を比較するとフェライト系(13Cr系、体心立方構造)のものが起きやすく、オーステナイト系(SUS304、316等、面心立方構造)は起きにくい。
 応力とは、加えられた力(外力)に対し材料内部に生じた力(内力)で、釣合った状態において単位面積当りの内力をいう。 これら応力は、垂直応力、せん断応力、引張り応力に分解される。
 応力腐食割れとは、腐食と引張り応力との相乗作用によって金属材料に割れを生じる現象であり、腐食は素材組成状態や環境(温度、湿度、ガス雰囲気(Cl-, SO2, NH3)、製品の状態等)により促進され引張り応力のかかった場所で破壊が生じる。 応力腐食割れは、ニッケル含有量の多い合金ほど起きにくく、モリブデンの添加は応力腐食割れ防止に有効とされている。

 3-1.  素材と水素脆性

 素材の硬度と抗張力の水素脆性における感受性は素材ごとに異なりまた表面処理、めっき種(工程)によっても異なるため水素脆性除去のためのベーキングは宇宙・航空機部品についてはAMS2759等に準じ行なわれている。
 ベーキングを行なわなくてはならない素材には、400シリーズステンレス(マルテンサイト等)、析出硬化ステンレス、の他、炭素鋼、低合金鋼、浸炭、窒化、炭・窒化処理品等がある。電気めっきおける鉄鋼材料では、硬度がHRC40以上、抗張力180ksi以上の高張力鋼は水素脆性を受けやすいため、めっき後4時間以内にベーキング処理を行なう必要がある。 (炭素鋼等の炭素数と水素脆性関連ページへリンク)
(例: 炭素鋼、低合金鋼への銀めっき…温度191±14℃・3時間以上ベーキングを行なう)(参考 AMS2759、QQ-S-365参照))
    次に、水素脆性を起こしにくいため、めっき後ベーキングの必要のない素材の1例を示す。
   (ただし、後加工、目的によりベーキング等を必要とする場合を除く)

めっき後ベーキングの必要のない素材の1例

 

材料名称

材料記号

耐食耐熱合金

 

  ニッケル基

 Inconel 718

 Inconel X750

 Inconel 600

AMS5589C, UNS NO7718、 AMS5664D, UNS NO7750等

AMS5582D,  AMS5598C, UNS NO7750, AMS5668H等

AMS5540L, AMS5665L,  AMS5580H, UNS NO6600等

  鉄基

 A 286

AMS5525G, AMS5726B,  AMS5804E, UNS S66286等

  コバルト基

 MP159

 MP35N

AMS5841C, AMS5842C,  AMS5843C, UNS 30159等

AMS5758F, AMS5844E,  UNS R30035等

  ニッケル-銅合金

 Monel400

AMS4544F, AMS4574D,  AMS4575D, UNS NO4400等

ステンレス鋼

  オーステナイト系

 ステンレススチール

 SUS301, SUS302, SUS303, SUS304, SUS305, SUS309S

 SUS310S, SUS316, SUS317, SUS321, SUS321, SUS347

 SUS384, SUSXM7等

非鉄金属

 アルミニウム及び
 アルミニウム合金

 

A1050, A1200, A2014, A2017, A2117, A2218, A2024

A3003, A4032, A5005, A5052, A5154, A5056, A5083

A6151, A6061, A6063, A7075等



 3-2.ベーキング有無の確認

 ベーキング対象素材でも、ベーキングを行ったため素材の本来の目的と特性を損なう可能性のある場合もあり、工程、処理条件、ベーキング処理の有無を顧客と検討する必要がある。



 

 城南電化情報委員会






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